売買契約書の記載内容と作成時の注意点

契約書

売買契約書とは、売主と買主の間で商品やサービスの売買を行う際に作成する書類です。
売買契約は契約書を作成せず口頭でも取引が成立しますが、売買取引に関する取り決めを書類に記載しておくことで後々のトラブルを防止したり、トラブル発生時のリスクを軽減したりすることができます。
特に、金額が大きい売買取引ではトラブル発生時のリスクも大きくなるため、契約書を作成しておくことが大切です。
一方で、契約書を作成すると言っても、どのように作成すべきか分からないという方も少なくないでしょう。
そこで、ここでは売買契約書の記載内容と作成する際の注意点を解説していきます。

関連:売買契約書の作成やチェックのポイントを解説【商法第526条に注意!】

売買契約書に記載する内容

売買契約書と一口に言っても、不動産の売買に関するもの、商品やサービスに関するものなど様々な種類がありますが、いずれにしても売買の対象物や代金、納期、支払い期日など取引に関する詳細を記載しなければなりません。
具体的な記載内容としては、基本合意・目的物・代金・引き渡し・所有権移転時期・検査・遅延損害金・危険負担・契約不適合・契約解除・協議事項・合意管轄といったものが挙げられます。

基本合意

基本合意には、売買契約である旨を記載するとともに、当事者のどちらが売主でどちらが買主なのかを明記します。

目的物

目的物は、売買取引の対象となる品物の名称と個数を記載します。

代金

代金は、取引金額や支払い期日、支払い方法などを明記する項目です。

引き渡し

引き渡しには、取引の対象物を買主に引き渡す期日と引き渡し場所を記載します。

所有権移転時期

所有権移転時期は、売主から買主に対象物の所有権が移る時期のことで、引き渡しの時もしくは代金支払いの時に設定するのが一般的です。

検査

検査では、買主による対象物の検査方法や検査期間を定めます。

遅延損害金

遅延損害金は、代金の支払いが期日までに行われなかった際に、売主が買主に請求できる遅延損害金の利率について定める項目です。

危険負担

危険負担は、当事者に責任がない自然災害などが理由で取引の対象物が滅失・損傷する際のリスクをどちらが負うのかを定めます。

契約不適合

契約不適合とは、契約に基づいて引き渡された対象物が契約内容に適合していないことを指します。
具体的には、対象物の種類や数量、品質などに違いがあった場合に契約不適合となりますが、この項目では契約不適合があった場合に対応を定めます。

契約解除

契約解除は、いずれか一方が契約違反をした場合や買主が破産した場合に契約を解除できる旨を記載する項目です。

協議事項

協議事項は、契約書に記載されていない事案が発生した場合に話し合いにより解決する旨を明記します。

合意管轄

合意管轄は、売買取引に関するトラブルが発生した場合に、どの裁判所で審理するのかを定める項目です。

契約の種類に合ったテンプレートを活用する

売買契約書を作成する際は上記の項目を漏れなく記載する必要がありますが、項目の順番は前後しても問題ありません。
インターネット上には契約書のテンプレートを公開しているサイトが数多くあるので、どのような文言を記載すべきか迷った際は契約の種類に合ったテンプレートを活用するのも良いでしょう。
ただし、2020年4月の民法改正に伴って、危険負担と契約不適合(旧瑕疵担保責任)の規定に変更があったため、古いテンプレートを使う際は現行の民法に対応しているのかを確認しておくことが大切です。

売買契約書を作成する際の注意点

また、売買契約書を作成する際は記載事項に漏れがないか十分にチェックするとともに、当事者間の公平性が保たれているかも意識しておく必要があります。
たとえ契約書を作成したとしても、売主・買主のどちらか一方が不利になっている場合は後々のトラブルにつながる恐れがあるため注意が必要です。
例えば、不動産売買において引き渡し後の固定資産税は買主が負担するのが一般的ですが、固定資産税はその年の1月1日時点での不動産の所有者に課されます。
そのため、引き渡しの時期によっては売却後の売主が固定資産税の納税義務者になってしまうことがあります。
このようなケースでは、引き渡し日を基準日として売主と買主がそれぞれ納税額を負担することで公平性を保つのが一般的ですが、契約書に固定資産税の負担について定めておかないと、売主が固定資産税を全額負担しなければならなくなる恐れがあるので注意が必要です。
このように、売買契約では取引に伴って発生する費用や税金の負担を売主と買主が公平に負担するように定めておくことが重要となります。

【まとめ】印紙の貼り忘れに注意

加えて、売買契約書を作成する際は印紙の貼り忘れに注意しましょう。
契約書と一口に言っても様々な種類がありますが、印紙税法で定められた課税文書に該当する契約書には印紙税が課されます。
印紙税は契約金額に応じて納税額が定められており、納税額に相当する収入印紙を契約書に貼り付けることで納税したことになります。
収入印紙を貼り忘れた場合でも契約書が無効になることはありませんが、税務調査の対象となって貼り忘れが発覚すると過怠税として本来納めるべき印紙税の3倍の金額を徴収されることになるので注意が必要です。

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